▼ スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
| BACK TO TOP |





▼ アスラン誕生日SS

ふえっくしょ!

「こんな日に風邪とか・・・アンタもツイてないですよね・・・」
ほんとうにツイてないのは、1ヶ月も前から予約しておいたのに、今日アスランと一緒に食事に出かけられなかったシンの方なのかもしれなかったが、ほてった顔をして布団に包まっているアスランの看病に必死でそんな気持ちはどこかに吹っ飛んでいた。そんなシンは、もう半日ほど付きっ切りでせっせとアスランのおでこのタオルを換え続けている。

「・・・ズビッ。う、ごめんな、シン、大体、今日は一緒に出かけるはずだったのに」
「いいんですよ、そんなことは、それより早く治してくださいよね!」

アスランが心底ガッカリした声で告げるのに、楽しみにしていたのは自分だけじゃなかったんだと、こんな時なのになんだか嬉しく思えてしまって・・・そんな自分が気恥ずかしくなってシンはプイと横を向くと、

「・・・俺だって忙しいんですから」

と付け加えた。

「・・・そうだよな、ごめんな・・・俺、コーディネーターなのにこんなで、お前に迷惑かけて・・・」
「あ、いや・・・そういうわけじゃ!だって仕方ないじゃないですか・・・」

戦後一緒に暮らし始めてからも、アスランは本人が望む望まないはお構いなしで戦後処理だ後釜だと引っ張りまわされてほとんど家に居なかった。お蔭でアスランの部屋で使われているのはベッドくらいのもので、生活臭はほとんどしなかった。そりゃ残念だったけれども、それでもシンにとっては、アスランが毎日自分の元に帰って来るんだと、その感覚だけで十分だった・・・いや、十分だと思い込もうとしていただけだったのかもしれないが。
最近は、どうにも活力に欠ける顔をしたアスランが心配で「アンタが嫌なんだったら俺が一言物申しますよ!」と穏やかとは言いがたいセリフを何度も玄関先で叫んだが、アスランが「いってくるよ」と微笑むばかりだったので、相変わらず流れに任せるままだった。シン一人が暴れたところで現状が変わるとも思えなかったが、それでも何もできなかった・・・いや、しなかった自分が悔しかった。

「シン、もう少ししたら熱も少しは下がると思うし、そしたら出かけよ?」
「なに馬鹿なこと言ってんですかアンタは!」

シンの沈黙をどう受け取ったのか、とんでもないことを口にし始めるアスランを思わず怒鳴りつけながら、この人はもっと自分を大切にすべきだとシンは強く思う。昔からそうだった、ザフトに居た頃から・・・いつだってこの人は自分のことは後回しで、他人のことにばかり必死で、それはもう馬鹿なんじゃないかと思うくらいに・・・

「シン・・・ぐすっ」
「なんですか」
「洗濯物溜まってただろ・・・それにお前、夕食もまだなんじゃないか?俺のことはいいから・・・さ・・・ディナーの予約、折角取ってあるんだし、誰か他の人を誘えばいいんじゃないかな、まだ間に合うかもしれないし・・・」
「・・・!俺は他の人を誘う気はないですから!それに、アンタが寝てる間のことは、俺が全部何とかしておきますから!」

本当に馬鹿だ。シンはアスラン以外を誘う気などこれっぽちもないのに何を言い出すんだこの人は。そんな自分の気持ちに気付かないアスランにちょっと腹が立って・・・そして、この人は俺のこと「子供子供」って言うけど、ああこういうところが子供なのかなと思いながら溜息を付いた。

「・・・じゃあ、ちょっとベランダでお茶でも・・・いつもと違う雰囲気が出ていいんじゃないかな・・・ゴホッ!」
「は?何言ってんですか!?」

今度は何を言い出すのか。本当にこの人は何を考えているんだかわけがわからない。

「何って、シン、そりゃホテルのディナーには及ばないけど、でも・・・」
「「でも」ってアンタ!もう10月も終わりなんですよ、しかも、今何時だと思ってんですか!」
「何時って・・・8時くらいだろ?」

フラフラしている割には時間の感覚がしっかりしているアスランにちょっと驚くが、その割りに現状認識が甘いんじゃないかとシンは告げる。

「わかってんじゃないですか、だからね、今、外は寒いんですよ!それで、アンタは病気でしょ?」
「大丈夫だよ、それくらい・・・もし悪化したら直ぐに部屋に戻れば良いんだし、それにシンが全部何とかしてくれるんだろ?」

ふんわりと笑いながら悪気無く言うアスランに「ああもうこの人は・・・」と仕方ない気持ちになってきた。

「・・・じゃあ、ちょっとだけですよ。ほんと具合悪くなったら・・・って今も悪いでしょうけど・・・あの、直ぐ言うように!」
「了解」

心配しながらも、ちょっと弾んだ気持ちでシンはキッチンに向かった。せめて温かいものでも入れようと。



* * *



外の気候は10月下旬に相応しくやっぱり肌寒くて、吐く息がちょっとだけ白い。ここはマンションの7階で、階下にはポツポツと民家の灯りが見える。そろそろ皆、夕食が終わってテレビでも見ながらの団欒が始まった頃かもしれない。

「ふぅ、この紅茶美味しいな、シン」

べランダの手すりにもたれてシンの入れた紅茶を啜るアスランは、パジャマの上にジャケットを3枚着込んでちょっと着膨れている。一枚はシンが先ほど自分が着ていたものを無理矢理着せたのだが、それでもまだ寒いんじゃないかとシンは心配だった。そんなシンを他所に、アスランは夜風を楽しんでいるようで、

「なんて紅茶なんだ?」
「え、『ピーチパラダイス』っていうんですけど」
「あはは、何か冬に向かうこの時期に反して夏真っ盛りって感じの名前だな」
「えへへ、そうですね」

笑うアスランにつられてシンも笑う。

「アスランさん、桃が好きだって聞いたんで・・・俺、その、実は今日のために用意しておいたんです」
「そっか、うん、好きだ。ありがとな、シン」
(・・・!)

大した意図はなかったであろうが、無防備の状態で告げられた「好き」という言葉にシンの胸は高鳴った。ああ、アンタ他の人にそういうことサラッと言わないでくださいよ?と思いながらシンは、落ち着こうと自分の手の中の紅茶を一気に喉に流し込む。

「うっ、げほっ!」
「シン、何やってるんだよ」

慌てて飲んだ所為で、紅茶にむせたシンの口端から零れる液体を、アスランがすかさず着ているジャケットの袖口で拭う。

「・・・!」

思わずぎゅっと目を閉じてしまったシンにアスランが不思議そうに問いかける。

「・・・どうした?」
「どうもしませんよ!全くアンタって人は!」

アンタって人はどうしてこうも俺を動揺させるんだ!・・・これも、完全に子供扱いされていることはわかっているのだが、それでもドキドキするものは仕方ないではないか・・・やっぱり、ちょっと悔しいけど。そう思いながら、シンはそっぽを向くと、何事も無かったかのように空になったカップに持ってきていた保温ポットから紅茶を注ぐ。

「でも、お前、なんか顔赤いぞ?もしかして俺の風邪がうつったんじゃないか?」

平静を装おうとしても顔には出ていたらしい。アスランが再びさり気無い動作で、今度はシンのおでこに触れてくる。吃驚して固まってしまったシンは、そのままアスランに検温される形になる。

「やっぱりちょっと熱い・・・ような・・・?」
「な、なんでもありませんって!大丈夫ですって!・・・それよりアンタ、手冷たいですよ、やっぱ寒いんじゃないですか?」

慌ててアスランの手を自分のおでこから引き剥がしたシンは、そのまま、掴んだ冷たいアスランの手をギュッと握る。
・・・ギュッと握った後で、自分はなんて大胆なことをしてしまっているのだろうかと、その事実に気付いて固まってしまった。

「シンはあったかいな・・・」

シンの硬直には気付かずに、アスランがぽつりとそんなことを言う。

「・・・子供だからって言いたいんですか」
「いや、そういうことじゃなくてさ、もっと、こう、上手く言えないんだけど・・・やっぱりちょっと寒かったし、うん」
「別に何だって良いですけどね、でも、アンタがそう言うなら手、握っててあげますよ!」
「うん」

なんだか今日はやけに素直だな、この人・・・と思いながら、降って湧いたような幸運にシンは、暫くそのままじっとアスランの冷たい手に自分の熱が移るのを感じていた。俺の熱なんて、全部全部残さずこの人にあげられたら良いのに。そう思いながら。



* * *



どれくらいそうして静かに空を眺めていただろうか、すっかり冷め切った紅茶を手に、ふとアスランが口を開いた。

「そう言えば、シンはさっきこの紅茶は『今日のために』とか言ってたけど、今日って何か特別な日だったのかな、あの、何かあったらごめんな、俺、忘れててさ」
「・・・は?!あ、アンタ・・・今日はあの、アスランさんの誕生日でしょ?」
「・・・!ああそうか」

漸く合点が言ったという調子で一人頷いているアスランを、この人忘れてたのかと、自分の誕生日をこうまでさっぱり忘れられるものなのかと、驚きながらシンは眺めた。シンなんて自分の時はそりゃもうワクワクのドキドキだったのだ。それに、アスランもシンの誕生日のことは覚えていてくれて、ケーキを持って帰って来てくれていたのに、だからこういう行事に疎いなんて思っていなかった。いや、アスランの性格を鑑みるに十分考えられることではあるが。・・・今思うに、あの時は、シンが自分から大々的にアピールした所為もあったかもしれない・・・と、思うと少し恥ずかしい。

「じゃあ、今日のディナーは何の為のディナーだと思ってたんですか?」
「ああ、それは、シンがちょっと家事に疲れたか、あと、マンネリ化した日常を感じたのかなと・・・そう思って」

なるほど、それでこの人は溜まった洗濯物が心配だの、別の奴と食事に行けだの言ったわけか。シン的にはガッカリというか、でもとてもアスランらしい答えにちょっと脱力しながらも、勢いよくセリフを飛ばした。

「俺がアンタと一緒の日常の一体どこにマンネリ化を感じるって言うんですか!」
「いや、でも、だって、それでも俺、あんまりお前と一緒に過ごせてないし・・・」
「いいんですよ!俺はッ・・・俺はこれでも結構満足してますし!」
「そうなのか?」
「そうなんですッ!」

半ば喧嘩腰に強く言い放ったシンの言葉に、やっとホッとした顔をして「そうか・・・良かった」と言うとアスランは足元に目を落とした。

「アスランさん?」

そのまま身じろぎしないアスランのことが心配になってきて、シンは繋いだ左手にじっとりと汗が滲んでくるのを感じる。

「どうしたんですか?大丈夫ですか?あの、もしかして風邪が悪化したんじゃ?!」
「・・・いや、大丈夫だよ」
「だったら、どうしたって言うんですか?」

不安げな表情のシンに気付いて、黙っているわけにもいかないと思ったのか、アスランがぽつりぽつりとこぼし始める。

「・・・いや、な、俺、こんなに幸せでいいのかなと思って・・・」
「アスランさん?」
「だって俺・・・ほんのちょっと前まで軍に居て・・・それで、戦って、殺して・・・その、俺の所為で誕生日なんて迎えられなくなった人がたくさん居るんだと思うと、俺・・・こんなでいいのかなと思って」
「・・・!」
「今はこんなに平和だけど、だけど、俺はそんな平和を享受していてもいいのかなって・・・」

アスランと繋いだシンの左手に強く力が加えられるのを感じる。

「・・・何言ってんですか。アンタは、アンタは今だってこんなに・・・コーディネイターの癖に風邪で倒れるまで頑張ってんじゃないですか!」
「シン・・・でも俺は、こんな俺が頑張ってもみんなが幸せになれるような世界に近付くのかなんて・・・そんな自信なんてこれっぽちもないし、それ以上にまた間違えるんじゃないかって不安で・・・」
「・・・!幸せになってる奴がここに居ますよ!俺はッ!アンタが居てくれるだけで幸せなんです!」
「シン・・・」
「それだけじゃ駄目なんですか!それに、いいじゃないですか間違ったって、何もしないよりずっといい!」
「・・・・・・」
「大体、そんな顔しないでくださいよ!馬鹿じゃないですか、そんな顔してたら、せっかく幸せな俺まで不安になっちゃうじゃないですか!」
「・・・うん、そうだな」
「そうですよ!」

言い切ったシンの言葉に、どこか苦しそうに、でも、やっと笑ったアスランの頬を涙が伝った。

「あれ、変だな・・・」
「あはは、多分、風邪の所為ですよ。アスランさんちょっと弱ってるんですよ」
「あ、うん。そうだな・・・多分、そう・・・」

溢れる涙を必死になって止めようとしているアスランが酷く小さな存在に見えて、シンはギュッとアスランを抱き締める。

「シン?」
「泣いちゃっていいんですよ?」
「やめろよ、恥ずかしいな・・・グスッ」
「鼻水付けないでくださいよ」
「わかってるよ、大体、風邪なんだから仕方ないだろ」

いくら自分が止めようとも、この先もずっとこの人は誰かのために無理をするんだろう。
でも、それならこの人が自分で自分を大切にしない分・・・俺が大切にしてあげればいいんだと、シンはその時思った。

(アンタは俺に出会えてホントにツイてますよ、それから俺も・・・)

この人が生まれてきてくれたことに感謝しながら、シンは静かな10月の空を仰いだ。





HAPPY BIRTH DAY アスランさんバンザーイ!おめでたいのでSSを書き散らしてみました。
シンアス恥ずかしいワァ・・・(ぶっちゃけ恥ずかしいのは私です)

スポンサーサイト
| trackback:0 | commnet:0 | BACK TO TOP |





▼ コメント

▼ コメントする

秘密にする
 

▼ トラックバックURL

▼ トラックバック

▼ SEARCH

▼ PROFILE

香月りんね

▼ SITE-CONTENTS

▼ CATEGORIES

▼ RECENT ENTRIES

▼ CALENDAR

06 | 2017/07 | 08
S M T W T F S
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

▼ ARCHIVES

▼ COMMENT

▼ TRACKBACK

▼ ETC

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。