▼ スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
| BACK TO TOP |





▼ シン・アスカ、アスランさんとデート、行きます!

「さ、行きますよ、アスランさん。上映開始まであと40分しかありませんからね!」

赤レンガで足元を固められた地下鉄の構内を足早に歩きながらシンが言う。
今日は、アスランさんの久々に取れた休日で、せっかくなので二人で映画の後食事でもしようということになった。つまりこれは傍から見ればおそらくデートなわけで・・・まぁアスランがどう思っているのかは知らないが・・・というか、アスラン的にはデートなんて言葉は微塵も浮かんでいないだろうが、とにかく一緒に出かけられるという事実にシンは前日から浮かれっぱなしだった。

「あ す ら ん さ ん と デ ー トォォォ!」

とリアルに叫びたい気持ちだったが、そんなことをすると当のアスランに「隣に聞こえるから」と怒られることがわかっていたので、そこはギュっと押さえ込んで、その情熱をそのまま妄想・・・ではなくて想像に傾けた。イメトレって大事だよね。そんなわけで、前日の夜からシンの準備は完璧だった。

「アスランさん、ちゃんと付いて来てますか?」
「ああ、さっきは悪かったな、シン。殴ったりして」

その割にかなりギリギリの時間に、シンとアスランはまだ家から数十分の場所に居た。映画館までは普通に見積もっても30分はかかる。なんでそんなことになったのかって、原因はアスランにあった。・・・いや、シンにも全然ないとは言えなかったが。
二人はちゃんと1時間以上前に家を出ようとしたのだ。幸か不幸か軍に居た所為で、余程のことが無い限り時間厳守は身に染み付いている。
ところが、いざ家を出ようという段になって、玄関で「行きますよー」と呼ぶシンの目の前に現れたアスランの服装のあまりの壮絶さに、シンは言葉を失った。

(そういえば、俺、この人の私服、ちゃんと見るの初めてかも・・・)

シンは自分で自分のことを結構おしゃれな方なんじゃないかと思っていたが、他人にまでそれを強要しようとは思わなかった。みんな好きにすればいい、と。しかし、アスランの今日の私服はそんなシンにとってもちょっと度を越していた。思わず「ちょ、アンタ・・・!」と口に出すや履きかけていた靴を脱ぎ捨てて、アスランの腕をひっ掴んで部屋に引き返した。

「着替えてください!」
「な、なんでだよ!?・・・何するんだ、おい、シン!」

わけがわからないとうろたえるアスランに、内心そんなアスランよりも更にうろたえているシンは相手をベッドに押さえ込むとさっさと脱がせにかかった。時間ないし。

「とにかくそれじゃ駄目なんです!」
「駄目って何が!ちょっ、なんなんだよ、お前はー!」

ガッ!!
アスランが転がっていたため、威力は軽減されていたものの、それでも強烈な右ストレートを喰らった。
無理矢理着替えさせようとした自分も悪かったと思う、でもそんなシンに対して「何が駄目なのかわからないので理由を述べろ」と駄々を捏ね始めるアスランもどうかと思う。大人気ないんじゃないかと。
まぁ上手く説明できない自分も何だが、説明できたところでこの感覚の崩壊っぷりでは、ハナから共通認識など持つのは無理なんじゃないのかとも思うのだ。この人かなり頑固だし。
とにかくその場は、アスランの鉄拳を喰らって、ここで喧嘩して出かけられなくなっては困ると正気に返ったシンの、「俺の美意識が許せないと叫ぶんです・・・!」という真摯な叫びによって収められた。普段なら「アンタが悪いんですからー!」と叫びながら去っていくシーンで見せたシンのあまりの必死さに、アスランは「お前がそこまでいうなら」と抵抗を止めたのだ。
見せびらかしたいというわけではなかったが、折角一緒に歩くなら可愛い格好していてくれた方が嬉しいじゃないか。

「・・・アスランさんのセンスは斬新過ぎます」
「そ、そうなのか?」

シンは一応言葉を選びながら、大人しくベッドに座ってシンの挙動を観察しているアスランに言う。そんなシンの言葉に、どうもアスランは純粋に驚いているようで・・・聞くところによると、今まで誰も彼のその超センスについて突っ込まなかったらしい。どうなっているのか。
代わりの服を探そうと開いたアスランの衣装棚は、とんでもない原色のパレードで、自分はどこの原生林に迷い込んだのかと頭を抱えたが、なんとか大丈夫そうな服を見繕い、上着はどうにも普通のものがなかったので、自分のグレーのコートを引っ張り出してきて上から着せた。ちょっと小さいかと思ったのに、なんだかピッタリで驚きながら、この人は、似合う服がいくらでもあるのにとても勿体無いと真剣に思った。

そんなこんなで、今度アスランさんの服を買出しに行こうと密やかに計画を立てながらズンズンと歩を進めるシンであったが、さっきから、シンより数歩後ろを歩くアスランが、きょろきょろといつもより落ち着きが無い気がする。どうしたんだろうかと不思議に思わないこともなかったが、でも、時間もあまりないし、シンは気にせずに前進することにした。
構内は、休日ということもあってごった返す人に占拠されていたが、その群れを器用に避けながら券売機の前まで辿り着く。シンはさっさと目的地までの乗車券を買い、改札上の電光掲示板に映された発車時刻を確かめるとアスランを振り返った。

「アスランさん、次発2分後ですよ!さっさと降りま・・・しょ・・・?」

さっさと改札を通ってしまおうと急くシンに対して、アスランはと言えば、何を思ったのか、天井近くの壁面に配置された地下鉄の経路図ボードをジッと眺めている。

「何ボーっとしてんですか?」
「いや、色んな路線があるんだなと思ってだな」

当たり前である。
そんな赤や青の線が交錯している何の変哲もない経路図の何がそんなに珍しいんだろうかと思いながら、時間の止まっているアスランをとりあえず急かして現実に引き戻す。

「とりあえず、早く乗車券買ってください。電車来ちゃいますよ」
「あ、ああ、そうだな、えーと・・・」

やっと斜め上方から視線を外したアスランであったが、今度は券売機の前で何やら棒立ちしたままランプの消えたボタンを眺めている。
と、思ったら、おもむろに右手を上げると人差し指で灰色のボタンを押した。

「・・・?」
「・・・あの、アスランさん何やってんですか?」
「ああ、乗車券というのを手に入れようとしているんだが」
「あの、お金入れないと買えないんですけど?・・・右上の穴から小銭入れてください」
「あ、そうなのか」

なるほどー、という顔をしながらズボンのポケットに手を伸ばしかけたアスランが、フと手を止める。

「・・・シン」
「なんですか」
「そういえば俺、小銭持ってない」
「は?じゃあ、アンタその他諸々のお勘定はどうやって?」
「カードだけど・・・何か問題あるのか?」

今までこれで大丈夫だったんだがなー、とちょっと考え込んでいるアスランを凝視しながら、支払いがずっとカードで済んでたって・・・シンはこの人はどんな生活をしてきたのかと、どこのボンボンなのかと、衝撃を受けていた。が、よくよく考えると、ザラ家って言えば、お坊ちゃん育ちに決まっていると言えば、決まっているのでこれは当たり前の事態なのかもしれないと思い直した。
それにしても、たしかこの人は先日19歳になったと思うのだが、この歳でもしかして・・・。

「・・・。聞いた俺が馬鹿でした・・・いいです。ここは俺が払って置きますから、アスランさんは今度から現金も持ち歩いてくださいね」
「ああ、すまないな、シン、助かるよ。後で埋め合わせするからな」
「ほんと、しっかりしてくださいよ!」

それはもう悪気のカケラも無いといった様子で、フンワリ微笑を浮かべて礼を述べるアスランに、何だか心拍数が上昇してきて、照れ隠しも兼ねてそう言うと、シンは視線を外したままアスランに券を渡して、改札に直行した。

ばたーん!

・・・直行して抜けたところで時々聞く音を耳にした。まさかと思いながら、しかし確かな予感を胸に振り返ると、やっぱりというか何というか人ひとり分の横幅の通路で、待ったをかけられたアスランが呆然と立っているのを発見した。左右の通行者がそんなアスランをチラリチラリと横目で見ていく。恥ずかしい、シンが。

「・・・?」
「ちょ、ちょっと、アンタ何やってんですか!」
「あ、いや、何って、俺にも何がなんだか、急に扉が閉まったんだが、俺何かしたか?」

考え込んでいるアスランに慌てて駆け寄りながら、もしかしてと、思ってアスランの右手に視線を移すと、さっきシンが渡したばかりの切符がしっかりと握られたままだ。この人は・・・この人は、本当に基本的なボケをかましてくれる。この瞬間、さっき脳裏を過ぎった、もしかしてこの人はこの歳で地下鉄初めてなんじゃないのか、という予感がシンの中で確実なものとなった。

「アスランさん、改札は切符を入れないと通れませんよ!」
「へ?・・・ああ、そうなのか。結構複雑な仕組みなんだな」

アンタは、それとは比べ物にならないほど複雑なMSをあれだけ悠々と扱っておきながら何を言っているのか。

「いや、全然複雑じゃないと思いますが」
「で、どっちに入れればいいんだ?手の届く範囲に差込口が二つあるんだが・・・」
「手前ですよ、手前!そんなの自然の流れに従ってくださいよ!普通手前に入れたくなるでしょ」
「そうか、ごめんな、俺知らなくて・・・」
「あやまらなくていいですよ・・・いいんで、あの、早くそこから出てきてください」

正直、さっきから視線が痛い。
一緒に暮らすようになって、この人の随分と適当なところやズボラなところを目にして認識を改めさせられたが、これはまた新鮮な事態だった。ザフトに居た頃に見たあの凛々しく、且つ華麗で、何でも自分で楽々こなしてしまいそうな雰囲気を持ったアスラン・ザラという人は何処に行ってしまったのか・・・ぼんやりと思いながら、シンは逃した2本目の地下鉄の発車を知らせる構内放送を聞いた。
そして、映画には間に合いそうにないなと思いながら、なのにアスランの袖を掴んで階段を降りるシンの足取りは何処か弾んでいた。




坂本真綾の『冬ですか』の脳内映像にアスランを混ぜたら、アスランさんが地下鉄の改札を出るところで引っかかって衝撃を受けました(まだ3行目なのに・・・!)
うん、正直天然っぷりがやり過ぎかもしれない・・・でも反省はしていない。楽しいから。
スポンサーサイト
| trackback:0 | commnet:0 | BACK TO TOP |





▼ コメント

▼ コメントする

秘密にする
 

▼ トラックバックURL

▼ トラックバック

▼ SEARCH

▼ PROFILE

香月りんね

▼ SITE-CONTENTS

▼ CATEGORIES

▼ RECENT ENTRIES

▼ CALENDAR

03 | 2017/04 | 05
S M T W T F S
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

▼ ARCHIVES

▼ COMMENT

▼ TRACKBACK

▼ ETC

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。